偽り男3

焼きついた日+聞いてない真実 妙な言い方をした土方さんだったけど、一週間経っても二週間経っても、特に変化はなかった。 部屋を片付けている様子もないし、出世して屯所から出て行きそうな話も聞かない。……ただ、 「またお客さん …つづく

偽り男2

好き嫌いの日+騒がされた日 旦那に助けてもらった日から、私は積極的に市中見廻りへ出るようになった。もちろん、旦那に会うため。 けれど私には知らないことが多すぎる。 どこに住んでいるかはもちろん、出没しやすいエリアすら知ら …つづく

偽り男1

勘違いした日+恋に堕ちた日 「テメェらァァァッ!!」 「「ギャァァァァッ!!!」」 屯所に響き渡る怒声と悲鳴。 「…うるさ。」 吐いた言葉と一緒に、ブンッと竹刀を振り下ろした。あれは私の機嫌を損ねる元だ。稽古場で練習して …つづく

朱に交われば赤となる

「あー今日も疲れたなァ。」 赤毛の男が服を脱ぐ。『疲れた』と言ってはいるが、常時にこやかな笑みを浮かべているため真意は読み取れない。 「…ねえ、紅涙は?」 「お呼びしますか?」 部屋の入口に立っていた遣いの者が、うやうや …つづく

想えば想わるる

私には、付き合って二ヶ月の彼氏がいる。 「あ、う、っ紅涙!」 「!」 照れ屋で恥ずかしがり屋の、嘘ひとつ吐けない真っ直ぐな人。それが、私の彼氏。 「そそその…今日はおっ…俺の家に…っ」 家へ誘ってくれるのは初めてじゃない …つづく

至上最大の恋でした10

おさらば! 「土方さん!土方さんってば!」 「うるせェな、近くで何度も呼ぶな。」 「だからこっちの土方さんですってば!」 何度呼んでも返事がない。指一本動かない。 「一体どこ殴ったんですか!?」 「んなもん、どこだってい …つづく

至上最大の恋でした9

独白 「俺は…、……、……お前のコピーだ。」 オリジナルに成り代わると言った人にとって、…いや、『からくり』にとって、口にしたくなかったであろう言葉。 「…俺はからくりだ。人間じゃない。」 「…。」 それを聞いていた本物 …つづく

至上最大の恋でした8

相対する者 金時さんは言った。 『強制終了させるボタンは左の眼球です』 「…、」 説明書を胸に抱き、言われたことを思い返す。 『左の眼球を押せば電源が落ちます。心配はいりません、少し強めに押せばいいだけですから』 「…出 …つづく

至上最大の恋でした7

からくり 翌日も、土方さんが飲み会へ出掛けるのを見届けてから夜間教室へ向かった。 いつもの部屋へ入ると、 「おかえり。」 いつものように髪の長い土方さんがいる。 「た…ただいまです。」 「紅涙、今日は頼みがあるんだが。」 …つづく

至上最大の恋でした6

おしあわせ 「また明日。」 「…はい、また明日。」 昨日と同じように別れ、帰路につく。 だけどその帰り道、 「おい。」 びっくりする人に声を掛けられた。 「っえ!?ひっ、土方さん!?」 「…驚き過ぎだろ。」 まさかの土方 …つづく

至上最大の恋でした5

違うこと、同じこと 「なら、お前自身で確かめてみろ。」 えっ… 「気になるんだろ?テメェで確かめろよ。」 「ど、どうやって…」 「好きにすりゃいい。」 すっ好きに…!? 土方さんは変わらず私に手を広げて「ほら」と待つ。 …つづく

至上最大の恋でした4

なぞ 結局、初回は思い出を確認し合って終わった。 その帰り、金時さんから「どうでしたか」と声をかけられる。 「何か発見はありましたか?」 「今日はただ話してただけなんで…なんとも。」 「そうですか。」 「あっ、でも楽しか …つづく

至上最大の恋でした3

土方十四郎 どういう…こと…? 「紅涙、」 声が似てるんじゃない。顔も似てる。顔も土方さん。でも土方さんは今ごろ飲み会のはず。そもそも目の前の土方さんは髪が長い。え……え? 「だ、誰…?土方さんじゃ…ないですよね?」 そ …つづく

至上最大の恋でした2

怪しい教室 「この辺のはず…だよね。」 歌舞伎町、歓楽街。 ビルの前の前に立つ呼び込みを交わし、辺りを見渡した。 「沖田さんも一緒に来てくれれば良かったのになぁ…。」 てっきり初回は案内してくれると思ってたのに、 『俺ァ …つづく

至上最大の恋でした1

沖田参謀 十二月。 この時期の管理職は地獄だ。 連日連夜、超売れっ子アイドル級の過密スケジュールをこなさなければならない。 「この昼食会は…、…まァいいか。」 『今年も一年お世話になりました』 そんな言葉を並べて、相手の …つづく

王子と姫と、11

渡る世間に鬼はない どのくらい時間が過ぎたのだろう。 「そろそろ決めてくだせェよ、土方さん。見てんのも飽きてきやした。」 静かな空間に、沖田さんの単調な声が響く。 「土方さん…」 「くっ…、」 考えを巡らせている土方さん …つづく

王子と姫と、10

憎まれっ子世に憚る これ以上ないというほど悪い笑みを浮かべた沖田さんは、 「いやァ安心しやした。こうじゃないと遊び甲斐がない。ねェ?」 おどけた様子で首を傾げ、こちらへ歩み寄ってきた。 「っ、」 「止まれ、総悟。それ以上 …つづく

王子と姫と、9

一寸先は闇 早朝から疾走した五月五日。 初めのうちは走って疲弊するばかりだったけど、思えばそこそこ充実している気がする。 だってずっと土方さんと一緒にいられてるし、甘い雰囲気になる機会も意外と増えてきたし! 「ふふっ、」 …つづく

王子と姫と、8

蝦で鯛を釣る敵 「お待たせしました~!」 パティシエが運んできてくれたケーキを見て、 「おおっ!」 「わあっ!」 土方さんも私も、歓喜の声を上げた。 …そう、私も!なぜなら普通のケーキもワンカット分、持ってきてくれていた …つづく

王子と姫と、7

月に叢雲、花に風 いきなり登場したパティシエに固まる。 しかしパティシエは私達を見て、 「あーなるほど。」 早々と何かを納得した。 「今年はもう始まっているんですね。」 さすが!話が早い! 「そうなんです!しかも今年は面 …つづく

王子と姫と、6

二度あることは三度ある 真選組との『拘束協力協定書』を私達に見せつけた土方ファンクラブの代表らしき人は、 「さあ皆さん!捕まえておしまい!」 薙刀をまるで手のように扱い、指し示した。 「くれぐれも土方様を傷つけないように …つづく

王子と姫と、5

弱り目に祟り目 「やっ…山崎さんっ!」 障子の隙間から山崎さんが顔を覗かせている。 「山崎…てめぇ…。」 「いやいや副長、怒るのは俺ですから!勝手に個人情報を覗かれた俺の方ですから!」 言うや否や、山崎さんは「もうヤケク …つづく

王子と姫と、4

恋は思案の外 山崎さんが部屋を出て行った後。 「…大丈夫…ですよね。」 山崎さんの話を聞こうと言ったのは私だけど、周囲に立ちこめる静けさが妙な不安を募らせた。土方さんは退屈そうに部屋を見渡して、「さァな」と言う。 「つま …つづく

王子と姫と、3

転ばぬ先の杖 局長室の窓から脱出後、私達は屯所の裏口を目指した。 「…こうも見張りがいねェのはおかしいな。」 様子を窺いながら先頭をきっていた土方さんが呟く。背後を守っている私も、まだ人の気配は感じていない。 「近藤さん …つづく

王子と姫と、2

枯れ木に花 「ちょ…ちょっと待ってくださいよ、近藤さん!」 「大丈夫だ、早雨君。君には何もしない。」 近藤さん達がじりじり間合いを詰めてくる。私と土方さんは、部屋の奥へ奥へと追い詰められていった。 「こんな時にふざけてる …つづく

王子と姫と、1

昨日の友は今日の敵 今年の五月五日は、 「ギャアアアアアアッ!!!」 断末魔で幕を開けた。 「くそッ!連絡が取れねェ!」 午前三時の局長室。 開け放たれた障子の向こうには、まだ夜の闇が広がっている。 「どうなってんだ!」 …つづく

Silent Night8

オニ 2人で歌舞伎町へ向かう途中も、至るところでクリスマスの装飾を目にした。イルミネーションしかり、ケーキ屋の前のクリスマスケーキ用特設会場しかり。 「…そう言えば土方さん、」 「ん?」 「マヨケーキを売ってるケーキ屋さ …つづく

Silent Night7

ふたり 「近藤さん、ちょっといいか?」 土方さんが局長室の前で声を掛ける。 中から近藤さんの声がして、私達は二人で中へ入った。 「なんだトシ、まだ残ってたのか。」 「今日は帰らねェよ。」 「そりゃまたなんで……、…まさか …つづく

Silent Night6

わたし 「何もかも、5年前のままだ。」 …5年前?5年…… 「何の話ですか?」 「何って、お前の話に決まってんだろうが。」 私が……5年?……どういう意味だろう。 「まさかお前…それほど短く感じたって言いたいのか?」 「 …つづく

Silent Night5

誰かさん 信じられないし、虚しいけど、土方さんの結婚相手が妊娠したと聞いても涙は出なかった。 だって…新しい生命の芽生えを喜ばなきゃいけないし、この人が誰かと家庭を築くのは…素晴らしいことなんだから。 「……おめでとう… …つづく

Silent Night4

エイリアン 『んー、そうそう。そんな感じだった気がする』 銀さんは電話の向こうであくびをしながら答えてくれた。 私の状況、やはり例の寄生型エイリアンが蔓延した時とかなり似ている。 「寄生されている場合は、頭に小さなオリジ …つづく

Silent Night2

近藤さん ようやく帰り着いた大江戸駅。 「あれ?こんな街路樹あったっけ…?」 たった2週間、されど2週間。 視界に入る景色はどれも妙に新鮮だった。 「そうだ、ケーキを買って帰らなきゃ。」 喜ぶ土方さんの顔を想像しながらケ …つづく

Silent Night1

坊っちゃん それは大江戸超特急5号車のグリーン車でのこと。 「はぁ~…なんだか疲れた。」 私は窓側の座席から、暮れていく山並みをぼんやり見ていた。 今年の12月Xデイは土曜日ということもあってか、車内はとても空いている。 …つづく

Silent Night3

土方さん 痛いくらいの沈黙は、自分の呼吸音すら気遣わせる。 『ここにいたい、でも今すぐ逃げたい』 そんな気持ちを押し込めて、私はあえて明るく声を掛けた。どんな風にでも、今より何かは変わるかと思って。 「っ土方さん、クリス …つづく

Silent Night

気持ちのご協力依頼 いつもご覧いただきありがとうございます。 このお話はストーリーの都合により、好ましくないことが随所にあります。 …なんて言い方をすると、「えっ、すんごい内容!?ハァハァ」なんてハードルまで上げてしまい …つづく

24 _おまけ

あわてんぼうのサンタ様 ―――ス…… (そ~っと、そ~っと…) 25日の明け方。土方の部屋へ入ってきたのは、苦労方の山崎である。 (え、あれ?2人分の服が落ちて…ちょ!?え、待ってこれっ、えっ、や、見ない方がいいやつ!? …つづく

24_7

Episode Final 「今年の第二幕は凄いぞォォ~!?」 ふんどし一丁の近藤さんが隊士達を煽る。私はその例外でもなさそうな土方さんに溜め息を吐いた。 まったく…これだから酔っ払いは。 第二幕で何するか知らないけど、 …つづく

24_6

Episode 6 酔っ払う土方さんは珍しい…と思う。 少なくとも私が真選組に来て以来、今日まで見たことがない。ゆえに新鮮だ。…でもまさか、 「どこ触ってんですか!」 こんな酔い方をする人だったとは…! 日頃抑え込んでい …つづく

24_5

Episode 5 握り拳を突き上げる隊士達の中で、私はポツンと置いてきぼりをくらっていた。 「な、何事…?」 まるでフェーズ五の時のよう。けれどあの時と違って、皆の顔は輝いている。『サンタ様からプレゼント』と言うだけあ …つづく

24_4

Episode 4 そして時は流れ、17時。 予定通りの時刻から真選組のクリスマスパーティーは始まった。 「な、なんか……スゴい。」 わいわいと賑やかな広間の壁に張られている『セイント☆クリスマス会』の横断幕。前方には見 …つづく

24_3

Episode 3 「はぁぁぁ…。」 疲れた…。 真選組で開催されるクリスマスパーティーの買い出しを終え、パトカーを運転している最中に溜め息が漏れた。思っていた三倍くらいの物量。なかなか気合いを入れたクリスマスパーティー …つづく

24_2

Episode 2 「よし!まずはスケジュール調整だ!」 私は恥を食堂に置き捨て、気を取り直して今日一日の段取りを考え始めた。 土方さんとキャッキャウフフになるのは当然。けれどそれ以前に『臨時で仕事が入る』なんてドン引き …つづく

24_1

Episode 1 愛しき我が副長の誕生日から、7ヵ月と19日。 「とうとう来たわ…、この日が!」 そう、今日は12月24日。 「恋人たちの……クリスマスじゃァァァ!!」 私は食堂に貼られているカレンダーの前で、握り拳を …つづく

厳重警戒日7

不戦勝 「って、堕ちてねェよ!」 ―――バシッ 「った、」 頭を押さえる。叩いた当の本人、土方さんは私の手を引いて廊下を走る。反対の手にはケーキの箱も忘れず握られていた。 「あ、あれ…?」 「『あれ?』じゃねェ!隙を見て …つづく

厳重警戒日6

第二次大戦 目の前に現れた、武装ギャル二人。 一人はバズーカーを担ぎ、もう一人は薙刀を手にしていた。 「ウチらが副長室を見張ってる隙に何さらしとんじゃワレェェ!」 「わ、われ…」 「ウチらより先に祝えると思ってんじゃねー …つづく

厳重警戒日5

オアシス+開戦のほら貝 なんとか無事、山崎さんの部屋に辿り着いた。 「はぁ……、」 山蔭さんは部屋にあった竹刀を使い、障子の内側に立て掛け、ストッパーにする。手際が良くて少し感心した。 「こういう状況に慣れてるんですか? …つづく

厳重警戒日4

合戦の爪あと 「ただいま戻りましたー。」 屯所は思っていたよりも静かだった。 「なんか…静かですね。」 「……。」 いつもなら誰かしら通って、「お疲れ」と声をかけてくれる。なのに今日は誰も通らない上、話し声さえ聞こえない …つづく

厳重警戒日3

敵との接触 「ところで山蔭さんって何歳なんですか?」 「……。」 「…あの……?」 「……。」 はァァ~…。 溜め息も吐きたくなる。何せずっとこの調子だ。こうして目げずに話し掛けてはいるものの、 「じゃ、じゃあ真選組に入 …つづく

厳重警戒日2

いざ、戦へ 朝礼は張り詰めた空気のまま解散。 皆の顔つきもすっかりフェーズ五モードに切り替わっていた。 「相当大変なんですね、江戸の五月五日は。」 一人の隊士に話し掛ける。なのに、 「……。」 「?」 返事をしてくれない …つづく

厳重警戒日1

戦への指示 それは、毎日開かれる朝礼で幕を開けた。 「えー、皆さん。おはようございます!」 「「「おはよーございまーす!!」」」 「今日は皆も気付いている通り、重大な宣言をせねばならん。心して聞け!」 「「「はーい。」」 …つづく

無くてぞ人は恋しかりける

「…すまない、紅涙殿。」 長くて艶のある黒髪が、風を受けて優しく揺れる。 「やはり俺は…長く居すぎたようだ。」 曖昧に欠けた月が低い雲を照らしていた。 「これ以上は害しか生まれぬ。紅涙殿にとっても、…俺にとっても。」 背 …つづく

雨夜の星2

後 「こっちだよ真選組さん!」 女性の声を聞きながら、路地裏で息を呑む。 もし…もしあの女性がここへ呼びつけたのなら……やるしかない。 「…銀さん、」 「ん?」 「その木刀、貸してください。」 「はァァ?なんで。」 「… …つづく

雨夜の星1

前 雨の音。雨の匂い。 暗い夜に、真っ赤な傘を差した銀髪の男はフラッと私の前に立ち、 「傘ねェの?」 声を掛けてきた。雨の中で座り込んでいた私を気に掛けてくれたらしい。 「この雨だと待ってても微妙じゃね?なんなら送るけど …つづく

星合い5

伍 「はぁ~、満足満足。」 屯所への帰り道。 まだ帰路につく人々は少なく、これから祭りへ向かおうとする人達と何度かすれ違った。その度に声も掛けられる。 「あら土方さんじゃないの~!…まさか彼女とお祭りに?」 「いえ、仕事 …つづく

星合い4

四 妙に足の速い土方さんに引っ張られながら、私達は七夕祭り会場に辿り着く。 「賑わってんな。」 「そうですね!お祭りって感じがします。」 ちょうちんの灯りとたくさんの出店、食べ物が焼ける香りと、行く先々にある七夕らしい笹 …つづく

星合い3

参 七夕用にと頂戴した笹は、 「よいしょっと。」 「しっかり固定しろよ。」 「してますー。」 中庭の木に固定させた。笹だけでは自立できないので、元から生えている木に括りつける。 「出来た!……うわー、」 なんというか、 …つづく

星合い2

弐 「じゃあトシ、早雨君。行ってくるから!」 近藤局長が玄関口で私達の目を見る。念押しするような熱い視線は、言わずもがな『絶対ケンカするなよ!』だ。 「何かあったらすぐに連絡してくれ!すぐ戻ってくるから!ほんとすぐ戻って …つづく

星合い1

壱 むかしむかし。 仕事熱心な男と、仕事熱心な女がいました。なんやかんやで二人は恋に落ち、結婚します。 しかし二人はあまりにも仲睦まじく、仕事そっちのけで過ごすので、 『お前ら全然仕事しねェから、今後は会うの年に一回な! …つづく

敵は本能寺にあり

時は、ハイエナ時代。 幸運のケツ毛を手に入れた男、真選組 近藤 勲。 彼が死に際に放った一言は真選組隊士を猛烈に駆り立てた。 「俺のケツ毛?欲しけりゃくれてやる!探せ!この尻のすべてをそこに置いてきた!」 近藤が遺した『 …つづく

会うは別れの初め

強がりなのは、私の悪い癖で。 「…強情なヤツ。」 彼にも、いつも呆れた様子でそう言われていた。 「早雨、お前はほんとに可愛くねェ女だよ。」 わかってる。わかってるけど、失う時が恐いから強がってるんです。素直になんか…とて …つづく

しゃぼん玉 11

江戸にて 「寂しいのは、お前だけじゃねーからな。」 紅涙に告げた後、水溜まりから発する光は俺の目を突き刺した。 「くっ…、」 瞬間、視界も頭の中も真っ白。耳鳴りまでする。目を開けているのか閉じているのかすら分からなくなっ …つづく

しゃぼん玉 10

不変の世界 あれは夢じゃなかったと気付く。 が、嬉しさに満たされた時間はそう長く続かなかった。 「…はぁ、」 やっぱり、寂しい。 ベッドに寄りかかり、ぼんやりと天井を見上げる。 「…いつかは忘れるのかな。」 一緒に過ごし …つづく

しゃぼん玉 9

避けられない時 これは、かなりマズい。 天人の土方さんと、私の隣にいる土方さんが今…同じ場所にいる。 「っ…、」 私達が消滅する条件は三つ。 24時間以内に繋いだ物を見つけられなかった時、この街の物を飲み食いした時、そし …つづく

しゃぼん玉 8

出口の穴 私が行きたがっていた場所。それは、 「地球防衛軍~!!」 「静かにしろ!」 「すみません…。」 リサイクルショップ『地球防衛軍』だった。 「こんな深夜でも開いてるんですね。」 「だな。正直、俺も開いてるとは思っ …つづく

しゃぼん玉 7

嘘と真実 首が痛い。痛くて、だるい。 「…ん、…?」 目を開けると、夜の景色に大きな川が流れていた。 ここ…どこだっけ…? …ああそうだ、私、おかしな世界に行ったんだ。銀魂の世界と私の世界が混じったような場所で、土方さん …つづく

しゃぼん玉 6

パラドクス あんな態度を取って立ち去っても、少しすれば戻ってくるんだと期待していた。煙草を吸って、気持ちを落ち着かせて、「悪かったな」って。 けれど土方さんは何分経っても、何十分経っても…戻ってこなかった。 「ほんとに怒 …つづく

しゃぼん玉 5

親切心 銀さんはチョコレートを頬張りながら言った。 私達は24時間以内に『繋いだ物』を見つけ、元の世界へ戻らなければならない。戻らなければ今の私達はもちろん、元の世界の私達まで消えてしまう…かもしれないと。 「『かも』じ …つづく

しゃぼん玉 4

七つのチョコを持つ男 黒いパーカーの男性が、かぶっていたフードを外した。銀色の髪がフワフワと風に揺れる。 「あっ!」 「お前は…!」 この天然パーマに…この死んだ魚のような目! 「銀さん!!」 銀さんキタァァァー!! 「 …つづく

しゃぼん玉 3

夢 「なんで…あそこに私が?」 私はここにいるのに…?それにあの猫みたいな尻尾や耳は? 「あれは天人の紅涙だな。」 「天人の?……なんで?」 私は銀魂の世界の住人じゃないのに…たぶん。 「俺にもよく分からねェが、紅涙と出 …つづく

しゃぼん玉 2

現実と非現実 どうりで変なわけだ。 だって目の前に銀魂の土方さんがいるんだよ?コスプレなんかじゃなく本人だって言い張ってるんだよ?明らかに夢だよねー。 まぁ夢の中で夢だと気付いちゃいけないって言い伝えがあるけど、都市伝説 …つづく

しゃぼん玉 1

ターミナル 今日は、なんでもない日。でも少しだけ特別な日。 「行ってきまーす。」 家を出て駅へと向かう私の足取りは軽い。なぜなら今日は… 「念願のチョコレートバイキング!!」 そう!友人二人とチョコレートバイキングへ行く …つづく

リクエストくださった、高槻威織さまへ 2

この度は…、…いやもはや『あの度』は100万キリリクありがとうございました~! キリリク1本目の長編が予想通り一年かかりまして…;お待たせの2本目でございます! テーマは『異世界トリップ』。 「おそらく威織さまが望んでい …つづく

煙草の王子様 5

Question.6 そうして、二人はお世話になった人々に簡単な礼を言い、人里離れた山奥へと消えていきました。 数時間経った頃、どこからともなく低い音が街に響き渡ります。まるで獣がむせび泣くようなその音は、雨雲を呼び、し …つづく

煙草の王子様 4

Question.4+Question.5 一方、医者から『説明を聞け』と言われた紅涙は、 「…そろそろいいかな。」 待合室で時間を潰した後、病院を後にしました。説明は受けていません。 「私は入院なんてしないし、真選組も …つづく

煙草の王子様 3

Question.3 これは、地球ではない星にある『江戸』のお話。 その江戸にも同じく、真選組という組織がありました。もちろん彼らも街を護る警察官です。 「はァーったく、いくらやっても終わんねェ!」 真選組の副長 土方十 …つづく

煙草の王子様 2

Question.2 「おねえさんとおにいさんはっ、つきあってるんですかっ。」 「「……、」」 「こいびとどうしですかっ。」 「え、えーっと…」 土方さんを見る。土方さんは私を見た。同じような顔をしている。 「…それは、 …つづく

煙草の王子様 1

Question.1 たとえば、算数の問題。 <問1>上司のA男さんがB子さんに言いました。 「地球の裏側で事件があった。至急向かうぞ」 その場所は二人の位置から、ともに2万km先の場所です。 A男さんは赤色灯を点けたパ …つづく

今日は何の日? 4

なくなればいいと思ったのは昔 原田と別れて10分くらい経った頃、 「戻りました~!」 紅涙が屯所に戻って来た。その足で紅涙は副長室に来て、「早雨です」と声を掛ける。 「入れ。」 「失礼します。」 部屋に入ってきた紅涙の頬 …つづく

今日は何の日? 3

こんなことなら記念日なんて 「うわ~っ、大きい鯉のぼり~!!」 街を歩けば、そこら中で『こどもの日』を感じる。甘味屋は柏餅を売り出しているし、玩具屋はここぞとばかりのアピール合戦。 マヨネーズや煙草を前面に推している店は …つづく

今日は何の日? 2

ないと寂しいもの 「紅涙め…どこにいやがる。」 アイツは必ず俺の誕生日を祝おうとしているはず。今日は特別に、さり気なく出くわして祝うタイミングを作ってやろう。 俺は広間を出て、ひとまず食堂の方へと歩いてみた。その合間も午 …つづく

今日は何の日? 1

別にいいんだけど、 「あ、副長!おはようございます!!」 「はよ。」 廊下ですれ違った隊士が元気よく俺に挨拶する。いつも通りの朝だ。 「おはようございます!!」 「おはよ。」 うん、…いつも通り。 「土方さん、おはようご …つづく

知らぬ仏より、馴染みの鬼 7

鬼の居場所 わかっていた。 謝ったところで、簡単に受け入れてはもらえない。謝罪して、真実を伝えても…そう簡単には。 「信じられないわ!あんな芝居までして人気を集めようとするなんて!」 「印象操作したってことか?クズかよ。 …つづく

知らぬ仏より、馴染みの鬼 6

鬼の心 「…土方さん、」 副長室に声を掛けた。 先ほど来た時と変わらず障子を固く閉じ、しんと静まり返っている。けれど明かりは点いていて、耳を澄ますと僅かに物音も聞こえた。 確かに……人がいる。 「土方さん、…いるんですよ …つづく

知らぬ仏より、馴染みの鬼 5

鬼の行方 「……。」 土方さんの手紙を読んだ後、私はぼんやりしたまま屯所を出た。懐には、その手紙が入っている。 「……土方さん…、」 どことなく、手紙から熱を感じる。まるで土方さんが傍にいるみたいに…温かい。 そんなこと …つづく

知らぬ仏より、馴染みの鬼 4

鬼の決意 あの騒動以降、見廻組の評判は急上昇。 今までなら市中見廻りをしていても目を逸らされるくらいだったのに、少し歩いただけで声を掛けられるようになった。 「精が出るね!」 「頼りにしてるよ!ご苦労さま!」 応援しても …つづく

知らぬ仏より、馴染みの鬼 3

鬼の計画 「が考えた見廻組の打開策は―――」 その策を聞いた時は、耳を疑った。信じられなかった。もしかしたら、私の聞き間違いだったのかもしれない。 「…あの、もう一度、話してもらえますか?」 「あァ?ったく、次はちゃんと …つづく

知らぬ仏より、馴染みの鬼 2

鬼の仲間 「っと。よし、出来た!」 電信柱の前で、埃っぽくなった手を叩く。貼ったばかりの紙は、太陽に照らされて白く光った。 「このチラシで全部かな。」 見廻組のイベントを告知するチラシだ。全ては見廻組を市民に売り込む―― …つづく

退くんの恋人 7

惹かれるものは変わらない 「俺は…、…紅涙が好きなんだ。」 「土方さん…」 「…思い出せよ、バカ。」 返事はいらないとばかりに、土方さんはまた口づける。 だめ…、…っこれ以上はダメ、…なはず………あれ…?どうして……ダメ …つづく

退くんの恋人 6

理性という壁 辿り着いた料亭は、それはそれは豪勢な佇まいだった。 「わぁぁっ!」 地上五階建ての和風建築は、まるで江戸城のような造りで、反射するほど磨かれた廊下が至るところに伸びている。朱色の柱と至る所にある金の飾りが、 …つづく

退くんの恋人 5

そろそろ漁の季節です 「~♪」 「何だか最近ご機嫌だね、紅涙さん。」 「えっ!?そっ…そう、かな。」 朝、居間で料理本を見ていた私に退さんがにっこりと話し掛けてきた。とっさに料理本を閉じる。どことなく…やましくなって。 …つづく

退くんの恋人 4

結局お昼はあんぱん 退さんにお弁当を届けるのは、なかなか容易そうではなかった。 「うそ…」 門番が二人も立っている。しかも『部外者は絶対に受け付けない!』という出で立ちが、とても怖い。 「でっでも私は微妙に部外者じゃない …つづく

退くんの恋人 3

これは恋ではありません 「それじゃあ土方さん、お気を付けて…。」 「はい。おやすみなさい、紅涙さん。」 「…おやすみなさい。」 土方さんの背中を見送って、静かに玄関を閉める。 「…はぁ……。」 毎日いらっしゃるあの人は、 …つづく

退くんの恋人 2

山崎が悪い 最悪だ。何もかも、山崎が悪い。 紅涙が屋根から落ちたのも、落ちた時に打ち所が悪かったのも、…記憶障害になったのも。 『これは記憶障害ですね』 『…はい?』 『どうやら過去の記憶がバラバラに組み替えられてしまっ …つづく

退くんの恋人 1

俺の話を聞いてくれ 嗚呼っ神様! 神様はどうして俺ばかりをこんな目に遭わせるのでしょう! 「ええ、…ふふ。そうなんですよ?」 そりゃあ『彼女ほしいなー』とか思ったりしましたさ! 監察って単独行動が多いし、俺ってどっちかと …つづく

知らぬ仏より、馴染みの鬼 1

鬼の恋人 これは、むかしむかしのお話。 かつて江戸には二つの警護隊が存在していました。その名は、真選組と見廻組。 黒い隊服で、いわゆる武闘派な浪人を集めただけの真選組に対し、 「…おい、」 清く冷静沈着に対応するエリート …つづく

World Is Yours ! 6

キミしか見えない 土方君の願いで早退することになった。 「とりあえず、俺の家でいいのか?」 「え?う、うん…どこでもいいけど。」 「フッ、なんだよ。やっぱ用意してんじゃねーか。」 「用意…?」 少し嬉しそうに話す土方君が …つづく

World Is Yours ! 5

帰りたい 「おはようネ、紅涙。」 「あ、お…おはよう神楽ちゃん。」 「どうしたアル?紅涙、顔が真っ赤ヨ。」 席に着くなり、神楽ちゃんが私の顔を覗きこんだ。私は「そんなことないよ?」と取り繕う。 「ちょっと走って来て…暑く …つづく

World Is Yours ! 4

恋は片想い 「おはようごぜェます、土方さん。」 朝。 通学路を歩いていると、総悟が声を掛けてきた。しかし俺は無視する。 「ありゃ?今日は土方さん一人ですかィ。」 そうだ。総悟の言う通り、毎朝一緒に登校している紅涙はいない …つづく

World Is Yours ! 3

オイシイこと 下校時。 私のツンデレ効果により、土方君が寄りたがっていたコンビニには寄らず、そのまま土方君の家へ直行することになった。 「ほらよ。」 昨日から保管してもらっていたモンブランプリンを受け取る。 「…あれ?」 …つづく

World Is Yours ! 2

沖田先生監修 甘い言葉を話す時の土方君は、 「う~ん…、」 やっぱり口が動いてない。沖田君の推測通り、腹話術で心の声をあえて漏らし、私を試しているのだ。 「だからってずっとしなくてもいいのになぁ…。」 休む間がない。昼食 …つづく