~実存編~
「あ、あの…、」
「What’s wrong?どうした、紅涙。」
それにこのルー語じゃない英語…。
「早く城へ戻ろうぜ。」
「城!?」
「戻って俺のpartyをする。そう言ったのお前だ。You see?」
ぱ、パーリィ!?ユーシー!?
やっぱりだ…やっぱり……この感じ…っ!!
「ま、政宗さま…ですか?」
「Ha!なに当たり前なことを。」
「…ッッき」
「『き』?」
キタァァァァァ!!土方さんに政宗さまが憑依したァァァ!!!
でもなんで!?どうして!?いやこの際どうでもいい!!
「あああ愛しております!!」
見える!見えるぞ!
真っ黒な隊服を着てるけど、どこからどう見ても土方さんなんだけど、確かに政宗さまがここにいる!
「お前が俺を愛してるなんて、今さら口にしなくたって分かってるさ。」
今なら土方さんの気持ちも分かる!
「俺の気持ちも分かってるはずだ。Right?」
ぐはァァァ!!
も、もうダメ…。今の言葉で爆死するかと思った。
「ほら、帰るぞ。城下見学は終いだ。」
政宗さまが屯所の方へ向かって歩き出す。どうやら城=屯所という認識らしい。
でもさすがに中へ入ったら違和感に気付いて醒めちゃうじゃ…?くっ…それはつらい!まだ憑依したばかりなのに!
「…っ、政宗さま!」
「Ahn?なんだ、紅涙。」
「け、ケーキ…まだ買ってませんよ?」
もう少しだけ引き延ばしても罰は当たらないよね!?
「ケーキ?」
「南蛮のお菓子です。誕生日パーリィに必須の物ですよ!」
「…そうなのか?」
「はい!」
「Partyに必須なら買うしかねェな。よし、案内しろ。」
「承知しました!」
よっしゃァァ!延長決定ィィ!!
「Oops!紅涙、その前に小十郎を呼んでくれ。」
小十郎!?そんなの準備してない!
「い、今呼ぶのは…ちょっとアレなんじゃないですか?」
「『アレ』?アレとは何だ。」
「おっお忙しいんじゃないかなーと思いまして。…畑仕事とかで。」
「たとえそうだとしても、俺が呼んでると知れば必ず来る。」
「ですよねぇ…。」
どうしよう。小十郎さんか…小十郎……うーん、似てる人っていないなぁ。せめて『怖い顔でも根は優しい』みたいな人がいてくれれば……
「あ、副長ー!!」
向こうの方から原田さんが走ってきた。走ってるなんて珍しい…。
原田さんは息を切らして、「勘弁してくださいよ」と言った。
「連絡つかないから探しに来ちゃったスよー。つーか二人して携帯忘れて行きますかね、普通。」
原田さんの迷惑そうな視線にポケットを探る。
…あ、ほんだ。持ってくるの忘れてる。
「あのっスね、沖田隊長からの伝言で――」
「だっダメです原田さん!」
原田さんの胸を押して遠ざける。でも両手で押してもビクともしなかった。
「なんだよ、早雨。」
「今はダメです!今は」
「Good Timing!」
「「え?」」
私と原田さんの声がハモる。
「小十郎、真田に文を届けてくれないか。文は部屋に置いてある。」
「ええ!?」
小十郎さんが原田さん!?それでいいの!?その認識大丈夫!?じゃ、じゃあ真田は!?幸村君は誰!?ていうか手紙なんて書いてた!?ああもうっ、気になることが多すぎる!!
「どうした、紅涙。」
「っな、なんでもないです。」
「いやあの、副長?真田って誰っスか。つか俺、小十郎でもないし…」
「モタモタするなよ。必要なら忍を飛ばせ。紅涙、一人借りるぞ。」
「どっどうぞどうぞ!」
「え、俺のまともな疑問は無視っスか。」
原田さんが顔を引きつらせる。私は「いいから従ってください!」と背中を押した。
「おっおい、俺はどうすりゃいいんだよ!?」
「副長室で手紙を探してください!で見つけたら、食堂に置いてる私のDVDを積んでいるところに置いておいてください!」
「なんか頼まれてた話と随分違ェんだけど!?」
「いいんですよ!」
背中をグイグイ押して歩かせる。図体が大きいせいでかなり大変だ。
「副長は大丈夫なのかよ!明らかに様子がっ」
「おかしいです!おかしいですけど、私が責任持って見てますから!」
「心配しかねェェ!」
「大丈夫ですから!!」
ギャーギャー言う原田さんをどうにか屯所へ戻らせる。立ち去る間際、
「言っとくけどお前と副長、かなり行き交う人間に痛いと思われてるからな!気を付けろよ!」
そんな言葉を残していった。
…ふふ、私には分かる。あれはヒガミというやつだ。
「Hey,紅涙。どういうつもりだ。」
「!」
背後から不機嫌そうな声が掛かる。
「な、何がです?」
「俺抜きで小十郎と随分親しげに話してるじゃねェか。」
「そう…ですかね……。」
「いつの間にあれほど親密になってんだ、Ahn?」
いけない!あんなハゲと仲が良いなんて勘違いは御免だ!
「私はいつだって政宗さま一筋ですよ!」
政宗さまの手を両手で握り、懇願するように見つめる。
「紅涙…」
「嘘じゃありません。命を賭けても!」
「Stop it!そんな簡単に命を賭けるな。ただでさえ、お前には忍を辞めさせたいってのに。」
「政宗さま…。」
私の髪を政宗さまが撫でる。
「なぁ、…紅涙。」
「は…はひ……」
きっ距離がッ!距離が近い!!
政宗さまはクスッと笑い、私の耳のそばで囁いた。
「Partyは後回しにして、このままrendezvousってのはどうだ?」
はいィィ!ぜひそちらでお願いします!!
「ま、政宗さま…」
見つめていると、ゆっくりと唇が近付いた。
「あのっ、外…ですから……」
「見せつけてやればいい。」
ああっ…政宗さまがそう言うのなら……。
私はゆっくりと目を閉じた。唇が触れる直前に息を吸う。そんな時、
「ぁっ…」
嗅ぎ慣れた煙草の匂いがした。思わず目を開ける。
「紅涙?」
「……、」
これまではどう見たって政宗さまにしか見えていなかったのに、
「…すみません。」