近付く事実
「…疲れたよな。」
俺も疲れた。たぶん、お前ほどじゃねェけど。
『…どうして、…、』
『どうして…真選組なんですか……っ』
気の利いたセリフも返してやれなかった。
だが江戸に攘夷がいる限り、こうなる結果とは隣り合わせ。相手が俺達じゃなくても…いつかはこうなってたんだ。
「よかったんだよ…真選組で。」
俺が真選組だから、出来ることもある。
「……帰してやるから。」
少しでも早く釈放されるよう、手を貸してやる。もちろん、合法的に。
「…大丈夫だからな。」
そっと紅涙の髪を撫でた。
部屋の隅に布団を敷いて、起こさないよう抱きかかえる。布団の上に下ろすと、紅涙が小さく身じろいだ。
「ん……、」
寝返りを打って、また寝息を立てる。
「…おやすみ、紅涙。」
そばの壁に背を預けて座った。
「はぁァ……、…。」
疲れたな、本当に。
これほどの疲労感は久しぶりだ。
溜め息を吐きながら肩を回す。ふと、窓が目に入った。言っても元々倉庫だから、換気目的の小さな窓だが。
「…曇ってんな。」
小窓から見える夜空を雲が覆っている。どうやら明日の天気は悪いらしい。
「明日…か、…。」
『俺ァ明日、紅涙を挙げるつもりでいますんで』
大層な自信だった。
俺をけしかけるためだけのハッタリかもしれねェが…どういう算段か分からない。
『せいぜい邪魔しないよう部屋に閉じこもってな』
「ははは、こりゃァ珍しい。」
「!?」
その声にカッと目を開いた。
「おはよう、トシ。」
近藤さんが立っている。
…いや、その前に寝てたのか?俺は。
「…、」
「うん?どうした。」
小窓から空を見る。明るい。
どうやらいつの間にか寝ちまっていたらしい。
「おはよう…近藤さん。」
「トシが自室以外で熟睡するとは珍しいな。」
「…ちょっと疲れが出ちまったみてェだ。…ふぁ、」