最後の壁!
 社内コンペの概要とその後

にいどめ

コンクールで賞を逃しても、数ヶ月以内にメールが来れば超絶チャンス!

そのメールは社内コンペのお誘い、つまりシナリオライターになるための最後の壁です。コンクール内容とは全く違いますよ。
今回は、社内コンペの内容と通過後の流れをご紹介していきます。




社内コンペは、

こんな形で提出する

「コンクール内容と全く違う」と言いつつも、社内コンペもシナリオの提出を求められます。
が、配布されるプロットを元にストーリーを執筆するので、自分で物語を考えたり、オリジナルキャラを創作することはありません。

以前に紹介した「あまり語られていない仕組み」にある“輪飾りの例”を思い浮かべてください。

商業シナリオライターの、
あまり語られていない仕組み

実は内容を考えていない
指定がギッシリ…etc

配布されるプロットは過去に配信済みアプリのもの。
プロットにはギッシリ内容が書かれているので、「このアプリをプレイしなきゃ!」と焦る必要はありません。

コンペ参加者はプロットを見て、設定通りにシナリオを書きます。
ようは、シナリオライターとしてお仕事する時とほぼ同じ形で執筆するということです。

コンペの条件は都度違うようですが、私の時は2キャラ×7000字の全14000字でした。

レディー7

2キャラ…?

そうなのです。
配信済みのプロットということは、既にキャラが確立されているということ。
なので、その中から執筆キャラクターを2名指定されます。

しかしプロットにはキャラがどんな口調か、どんな考え方をするのかまでは書かれていません。

レディー8

じゃあやっぱりアプリをプレイしなきゃ!

…となるかは難しいところ。
既存キャラや配信済みストーリーをプレイすると当然書きやすくなります。が、おそらく同じようなものが出来上がってしまいますよね。
ストーリーを思い浮かべようとしても、「知った内容」を意識して思い通りに書けなくなってしまうのです。

社内コンペは、決して「うちの過去配信物と同じものが書けるか見たい」というわけではないはず。
既に配信済みのキャラであっても、設定からアナタが思い浮かべたキャラ、ストーリーでいいのです。

ブッ飛んだ展開や書き方はさすがに避けるべきですが、向こうはアナタだから書けるオリジナリティーを求めているので、その部分を忘れず取り組んでください。

具体的な課題内容

ではもっと具体的に、社内コンペの中身をご紹介します。

どんなアプリが課題に?

過去に配信したアプリが課題となります。ただし現在配信中のものとは限りません。
もし配信中のアプリなら、「このプロットだとこんなストーリーになるのか~」とカンニング的資料に出来ますね。

けれども!
先程も言った通り、それを参考資料にすることはお勧めしません。見てしまうと、どうしても影響を受けてしまいます。

もし見るなら極力ストーリーは読まず、書き方だけ(形式など)を参考にしてください。…難しいですが。

どんなキャラが指定される?

おそらくアナタがシナリオコンクールに提出した内容から、向いていそうなキャラが選ばれています。
もちろんこちらで選ぶことは出来ません。

提出期限は?

1週間以内です。
もしかすると、課題内容で差異があるかもしれません。

無理厳禁!

独自性の出しどころ

おそらく初めてプロットを見た瞬間、「オリジナリティーを表せる場所がない…!」と衝撃を受けることかと思います。なにせガチガチに作り上げられたプロットなので…。

だからと言って、必死にオリジナル展開を組み込ませるのはプロットから外れ過ぎているとしてマイナス効果になります。
社内コンペの段階では、独自性は決められた展開の中で出すと効果的

たとえば、プロットに以下のような展開があるとします。

悩み事を解決できず、自宅でひとり悶々するヒロイン。そこにAが帰宅。ヒロインは夕食時に相談することを決める。食後、悩みを話し始めると――

なんてことのない流れです。
しかしこういう部分がオリジナルを出しやすい部分となるのです。

以下はシナリオとして書いた場合の例。

○ヒロインとAの家・リビング(夜)
(どうするのが一番いいんだろう……)
A「ただいま」※立ち絵なし
ヒロイン「!」
玄関先から聞こえてきたAさんの声にハッとする。
時計を見れば、いつの間にか20時を回っていた。
(うそ、もうこんな時間!?)
私は慌ててソファから立ち上がり、Aさんの元へ向かった。

○ヒロインとAの家・玄関(夜)
ヒロイン「おっ、おかえりなさい!」
A「ただいま。どうかした?」
ヒロイン「あ……うん、ちょっと考え事を……っ、あ!」
A「?」
ヒロイン「ご、ごめんなさい。私、夕飯の用意がまだ出来てなくて……」
A「いいよ。それよりも悩み事、俺で良ければ聞くけど?」
その言葉に、少し肩の力が抜けた。
すぐ傍に支えてくれる人がいるって、幸せだ。
A「言いづらい?」
ヒロイン「ううん、そうじゃないよ。じゃあ…お言葉に甘えようかな」
A「おう。ドーンと甘えなさい」
ヒロイン「ふふ、ありがとう。先に夕飯の用意するね」
A「俺も手伝うよ」

※ト書きとセリフの間の空行は省いています。

プロット内容をシナリオにするとこんな感じになります。
もしシナリオライターとしてお仕事しているなら、文字数の加減を見て、この先でプロットにはない調理シーンを追加する…という具合ですね。

しかし今は社内コンペ。
Aと一緒に夕食を作った時間までは書かず、ト書きで済ませてしまいましょう。

あくまで“自分らしさを出すために新たな展開を追加する”のではなく、“自分らしさを出すために展開を膨らませる”というイメージで執筆してください。そうすれば、コンペ主催企業の意に沿ったシナリオに仕上がるはずです。

では、まとめ
以下がコンクールと社内コンペの違いです。

  1. メールが来た人のみ参加可能
  2. 決められたプロットを元に執筆する
  3. 提出する文字数や話数は都度違う
  4. キャラは選べない、かつ複数キャラを書く
  5. 提出期限が短い
  6. 結果は2、3週間以内にメール連絡

この社内コンペを通過した後はどうなるか。
当然シナリオライターとして契約するわけですが、まだもう少しお仕事は始められません。

無事に、

社内コンペを通過したら…

送られてくる資料に入力したりサインしたり、身分証などを提出したり…と色々な作業を経てシナリオライターの業務委託契約を結びます。

いよいよお仕事か~!
と意気込む前に、まずはアナタがどのアプリでシナリオを書くのか決めなければなりませんよね。

実はこれ、希望を聞いてもらえるのです。

担当アプリの決め方

なんと驚くことに、「担当したいアプリはありますか?」と希望を聞いてくださいます!

が、叶うわけではありません…。
特に主力アプリ(現在人気があるアプリ)などは期待できない…と思っていいかもしれません。現に叶いませんでした。

というのも、担当アプリは主に人手不足中(または育成する余裕がある)アプリの中から決められます。

シナリオライターを求めているアプリが「この人をうちにお願いします!」と手を挙げてくだされば、当事者へ話が下りてくるという流れだそうです。そして……

メン3

○○というアプリはどうですか?

レディー8

お願いします!

と一致すれば、(仮)担当アプリ決定となります。

こんな流れではありますが、もし配属を希望するアプリがあるならぜひ聞いてもらった時に言ってみてください。もしかしたら…ということがあるかもしれませんよ。

ではなぜまだ「(仮)担当アプリ決定」なのか。
この“(仮)”は、見たままの通り仮決定という意味です。

次の段階『トライアル』を経てアプリとマッチしていれば、担当アプリが確定するのです。「うちのアプリに合わないな」と判断されれば、違うアプリで再度トライアルを受けることになる…と思います。

トライアルって何?

トライアルとは、(仮)担当アプリをお試しで執筆してみる期間のこと。
キャラ設定や資料、参考になりそうな数話の配信済みシナリオを受けとり、一定の文字数で実際に執筆するのです。

文字数やキャラ数はアプリによって、または担当者の判断によって違います。

私の場合、通常の依頼より短い文字数でメインキャラ全員を執筆するというものでした。
全員が登場する5000字のストーリーを1話書き、選択肢で分岐させる。分岐後は各キャラ2000字程度のストーリーを書く…という感じです。
※選択肢や分岐の扱い方は、後日「シナリオライターとして書くシナリオの注意点」でご紹介します。

このトライアル課題として渡されるプロットも過去に配信したストーリー。なので参考資料として、”実際に配信したシナリオ”(言わばお手本)も一緒に渡してくれます。

参考資料として渡される以上、目を通さないわけにはいきません。が、やはり読むと丸っきり同じような作品になってしまうので、ここでも『どう書くか』だけを意識して閲覧することをお勧めします。

トライアルを通過すれば、ようやくシナリオライターとして活動開始!初の依頼を受注し、プロットを見ながら執筆していくことになります。

…いかがでしょうか。
こうして書くと『社内コンペのお誘い』から確定まで非常に長く感じますが、取り組む期間はどれも短く、あっという間に感じます。一番長くて苦痛なのは結果を待つ時間かもしれませんね…。

コンペを受けるからには、ぜひ言葉を出し惜しみせず、全力で挑んでください!

…という感じで早送りにお話ししてきた、「シナリオライターになるための話」はここまでです。
次回からはシナリオライターとして活動する上で知っていると役に立つ『担当者』『依頼と受注』、そして『プロット』『シナリオを書く時の注意点』等について一つずつ取り上げていこうと思います!


ご覧いただきありがとうございました!