辞めた理由にも関係する、
あまり語られていない“仕組み”

にいどめ

私がシナリオライターを辞めた理由はずばり、
「この先も引きこもりながら執筆を続けて大丈夫!?」という焦りと、「ストーリーの内容に違和感を覚えることが増えた」です。

…冒頭で早くもカミングアウトしましたが、1つ目の理由は私の残念な時間配分のせい。
詳しくは1つ前の記事をご覧ください。

今回取り上げたいのは2つ目の理由、『ストーリー内容に違和感を覚えることが増えた』です。

この文章、ご覧になった方によっては、

自分で書くストーリーに違和感って…自分のせいじゃない?

と首を傾げた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

これはあまり語られていない“ストーリーを完成させるまでの仕組み”と関連しています。
今回は、辞めた理由にも関係するこの仕組みについてお話ししていこうと思います。

シナリオライターって…




実は…

内容を考えられない

衝撃の見出しですね。
「能力がなくて考えられない」ではありません。基本的に考える権限がないのです。

と言うと語弊がありそうですが、配信側は、

いつでもうち(本社)へ遊びに来てください!
来た時にプロット会議をしていればぜひご参加を~

と言ってくれます。
社交辞令ではなく、本当に「一度は来てみて」なニュアンスです。
つまり、プロット会議に参加すれば一緒に内容を考えられる=権利はあるのです。

私は残念ながらタイミングが合わず行けませんでしたが、中には頻繁に行かれている方もいるそうです。

ただ、
「よし、それなら毎回プロット会議に参加しよう!」という計画はほぼ不可能です。

なぜ不可能?

V社は毎月ストーリーを配信しています。
漏れなく配信するためには、常にシナリオを用意=常にプロットが必要。そのため、自分が執筆している時も、本社では次回配信分のプロットを作成しています。そうなると、絶対に参加できませんよね。
プロット会議へ積極的にシナリオライターを参加させられないのも、時間的な面から見て仕方のないことかもしれません。

このように、アプリの在宅シナリオライターは配信側で考えた内容をプロット(時系列に内容を記したもの)という形で受け取り、執筆しています。

個人制作ではなく依頼を受けて執筆しているので、少なからず内容に指定があるのは当然です。

しかしこの「内容の指定」、V社は生半可なものではありませんでした。

プロットは…

生半可じゃない指定で溢れている

たとえば、昔話『浦島太郎』を依頼されたとする場合。

浦島太郎がいじめられていた亀を助け、お礼に海中の竜宮城へ連れて行く。
竜宮城にいた乙姫から宝箱を貰うが、陸地へ戻って開封すると瞬く間におじいさんに…。

なんてアバウトな指定ではありません。
もっと、もーーーっと細かい指定です。こんな感じに…

ある日、釣り具を片手に海へ訪れた浦島太郎。「今日はデカイ魚を食いたいなー」いつもの釣り場へ向かっていると、何やら騒がしい声が。「コイツ全然動かねぇじゃん!」数人の子供が1匹の亀をいじめていた。浦島太郎は子供達の元へ向かい……

どうでしょうか。
子供を叱るまでで既にこの量。
浦島太郎がおじいさんになる頃には一体どんな内容量になっているやら…というくらい細かく書かれています。

そしてプロットにはセリフも含まれます。
多くはありませんが、ヒロインやキャラのセリフすら指定されている箇所もあるのです。

このプロットの出来上がり具合は制作者によって違い、もっと細かく書かれていたり、もう少しアバウトに書かれていたりと様々。

ですが基本的に内容としては完成しているので、このプロットを見てシナリオライターはストーリーを書き進めていくわけです。

え…、…シナリオライターって必要?

初見時、そう思いました。
ここまで書くならプロット制作者が仕上げてしまう方が早いんじゃないの?と。

しかし意外とここからストーリーにすることが最も時間を要する難しい作業なのです。

「ストーリーにする」?

私は「行動やセリフ、背景描写などを書き、物語にすること」と捉えています。
プロットで想像しなければいけない(頭の中の)映像を文字にし、ユーザー全員が同じような映像を思い描けるようにします。

…ということで、
ここまで説明した流れを、パーティーなどに使う『輪飾り』で例えてみました。

輪飾り1本を1話として見てください。

色が付いている部分はセリフ、
輪飾り1つ1つの「輪」は、プロットに記されている内容です。
浦島太郎で言えば、「いじめられている亀と出会う」や「竜宮城へ向かう」といった内容ですね。

内容1つ1つが繋がって1話=輪1つ1つが繋がって輪飾りとなります。

プロットの『輪飾り』は、輪の繋がりが弱い上に色もなく、パーティーで使えそうにありません。
ですのでシナリオライターは、これを見ながら『パーティーで使える輪飾り』を作ります。
その『パーティーで使える輪飾り』に、おかしなところがないかチェックし、修正したものが完成品『パーティーで使う輪飾り』となります。

要は決められた内容に沿って書くだけでしょ?
シナリオライターって結構楽な仕事だったんだー…

それがそうでもないのです…。

意外なことに、プロットをガチガチに作り上げられるほど執筆は苦労します。

楽に思えて楽じゃない…

いくら内容を細かく記されていても、そのまま繋げただけでは依頼されている文字数(5000文字など)に到達しません。

そのままと言っても当然セリフはたくさん付け加えているはずですが、文字数は大して伸びないものです。

「じゃあもっと会話させよう!」と安易に解決することも出来ません。
なぜなら、『セリフばかり続けること』や、『ヒロインやキャラが同じ場所に長く留まること』はあまり好ましくないとされているからです。

詳しくはシナリオの書き方をまとめる際にお話ししますが、色々と縛りのある中でキャラに何らかの行動をさせなければならないのです。

ところが、
ガチガチに作り上げられたプロットだと、新たな行動を追加したくても時間軸に隙間がなく、非常に話を広げづらい。

また逆に、
ガチガチに詰め込んでいるので、プロット通りに書くと文字数が溢れてしまう場合もあります。

この場合はひとまず試行錯誤を繰り返して書き上げた後、「これ以上こちらで文字数を減らせません」と伝え、向こうでバッサリとカットです。
悲しいですが、アプリの配信容量の都合上、こればかりはどうしようもありません。

このようなことから、プロットの内容が細かいほど時間も掛かるというわけです。

ですがここまでガチガチに作り上げるプロットだからこそ、
多くのシナリオライターが執筆しても、同じような雰囲気のストーリーをユーザーに配信できるのでしょうね。

さて、

ここまでの話を踏まえ、私が辞めた2つ目の理由に戻ります。

「ストーリー内容に違和感を覚えることが増えた」

プロットの内容に、ということです。
では実際にどのような部分か、
あまり公にすることではないかもしれませんが、少しだけお話しします。

私が…

違和感を覚えた箇所について

「ストーリー内容に違和感」と書いていますが、「ストーリー内容全体に」ではありません。内容の中にある、キャラクターの行動や言葉に共感できなくなってしまいました。

たとえば「こうやって胸キュンシーンを書いてください」と指定されている内容を見た時、「これで胸キュンになるか…?」と疑問を抱いてしまうのです…。

依頼された通りに黙って書くのもお仕事。
分かってはいるのですが、次第にその疑問をねじ伏せることに時間が掛かり、執筆スピードがどんどん落ちました。

どうにか書き上げる日々を過ごすうち、「私以外の人なら、もっとこのプロットを理解して書けるんだろうな」とか「私が年のせいで鈍くなったのかな」などとネガティブ思考を巡らせると、

3年間、貴重な経験をさせていただきありがとうございました!

となったわけです。

ちなみにプロットを作るのは、そのアプリに属している社員です。
担当者を含めた数人が、時々でプロットを作成し、上司にOKを貰った後、シナリオライターの元へ送ります。

つまり、

ストーリーを書いているシナリオライターが一人でないのと同時に、ストーリー内容を考えているプロット制作者も一人ではないのです。

毎月の配信ペースを考えると仕方ありませんよね。
プロット制作もシナリオ添削もその他の業務も一人で…なんて、さすがに過酷です。

配信ペースを落とせば質も高まりそうですが、
やっぱり新しいストーリーをテンポよくプレイしたい方は多いですし、何よりこのハイペースだからこそ、多数のシナリオライターを必要としてもらえるのも事実。

このような面から見ても、私は大手企業ほどシナリオライターになれやすいと考えています。

…というわけで。
次回はいよいよ、シナリオライターになる方法についてお話ししていこうと思います。




ご覧いただきありがとうございました!