時間数字8

涙と告白+過去の葛藤

部屋へ戻っても、何をする気にもなれなかった。
畳に寝転がってゴロゴロしても気分は冴えないし、目を閉じても二人の顔が頭に浮かんで眠れない。険しい表情の土方さんと、笑顔のミツバさんが…瞼に焼き付いている。

「…、」

険しく見えたあの表情は、ミツバさんの結婚を知ったせいだとしたら……

『トシとミツバ殿は……』
『いや、トシに聞きなさい。他人の俺が話すことじゃない』

…そのせいなんだろうな。
近藤さんの話では、二人は上京する前からの付き合いらしいし。きっとその頃に何かが……

「……はぁ。」

否が応でも溜め息が漏れる。
既にこの部屋には数えきれない数の溜め息が充満していた。

「…どうするのかな。」

土方さんは。
ミツバさんが結婚すると知って、何か行動するのだろうか。……いや、しないか。
たとえミツバさんを想っていても、一人で傷つき、適当に気分転換をして、心にフタして生きていくような人だから。

「フタ…、」

腕を上げ、シャツを捲り上げる。

「…4。」

二の腕に『IV』とある。
もっと使いどころを考えて使う予定だったのに、早くも4回にまで減ってしまった。

「ケーキなんかに使うんじゃなかったなぁ…。」

思い返せば、せっかく時間を戻したというのに、大した結果を残していない。
ケーキは二度食べた気分になっただけで、実際は一度。
沖田君とのキスこそ避けられたものの、私を想ってくれていることに変わりはなく。
土方さんとミツバさんの件も、二人が出会わないように変えられなかったわけだし……

「なんか…スゴロクみたい。」

いくら戻っても、いくらやり直しても、結局違う形で元の道へ戻り、進む。自分勝手に進めたように思うのは僅かな時間で、次第に軌道修正されていく。何をしても…無駄だと云わんばかりに。

「…。」

それなら、

「残りはせめて…人のために使おうかな。」

どうせ自分のために使っても結果が同じなら、残りの4回くらいは誰かのために使おうか。

「自分のためじゃなかったら…結果も変わったりして。」

実験するような回数は残っていないけれど。
誰かのために使ったら、少なからず今より気分は良いはずだ。

「……そうしよう。」

身体を起こした。
時計を見ると、いつの間にか夕飯の時間を過ぎている。

「……まぁいっか。」

なんだかお腹も減ってないし、今日は抜きにしよう。
ふぅと息を吐く。夜の庭から心地よい風が入り込んだ。何気なく目を向けたその風の先に、

「あれは……」

廊下を歩く土方さんと、

「…誰?」

アフロヘアーの隊士が付き従って歩いている。

「え……山崎さん?」

あの地味な顔、山崎さんに違いない。
でもなんでアフロ…?いやそれより二人とも帯刀している。今夜の見廻りに関係ない組み合わせなのに…

「何があったんだろう…。」

今から外に出て行くようだ。
何かあった?事件?二人だけで行動するの?

「……あ~…、…やめよう。」

声が掛からないということは、私に関係がないということ。気にしたり考えたりしても、意味がない。
いい加減、気にすることも疲れたし。

「…、」

沖田君の部屋を見る。
灯りは消えていた。ミツバさんと出てから、まだ戻ってきてないらしい。

「…ミツバさん、これから江戸に住むのかな。」

住むなら屯所に顔を出す機会も増えるんだろうな。そうなったら、

『待ちやがれコルァァァッ!!』

土方さんの怒声や、

『何やってんでさァ!早く走れ!!』

一緒に逃げまわる沖田君は、いなくなっちゃうかもしれない。
ミツバさんという存在であんな風に変わる二人を考えると…きっと。

「……、」

なんだか……寂しい。
これからどう変わっていくんだろう。
私だけ変われず、取り残されそうで……心細いな。

その後、
ぼんやりと庭先で夜風に当たった。
屯所内の部屋の灯りが、一つ、また一つと消えていく。
誰の話し声も、物音すらも聞こえなくなった頃、カチャカチャと小さな音が近付いてきた。歩く振動に合わせて、刀が揺れる音。

「…紅涙か。」

名を呼ばれ、顔を向けた。土方さんだ。

「…お帰りなさい、土方さん。」
「……ただいま。」

静かな空気によく馴染む声だ。
そんなことを思いながら中庭に視線を戻すと、

「こんなとこで何やってんだよ。」

隣に腰を下ろした。

「…暇つぶしです。なかなか……眠れなくて。」
「そうか。」
「…。」
「…。」
「……土方さんは…、…こんな時間までどちらに?」

中庭を見たまま、土方さんに問う。

「…ちょっとな。」
「…、…沖田君もまだなんですよ。」
「…そうだな。」
「…。」

沖田君が遅くなっていることを、土方さんは流し聞く。気にかける様子はない。
それはつまり…遅くなっている理由を知っているということ。

「一緒だったんですか?」
「……いや、」

大きな溜め息を混ぜ、

「違う。」

否定する。
その含みのある声音は、『言いたくない』とも聞こえた。

「…何があったんですか?」
「何もない。」
「でも」
「お前には関係ねェ話だ。」
「っ…、」

それは…わかってるけど……

「…っ」

その言い方は、傷つく。
仮に、何かから私を護るための『関係ない』だとしても、今日の土方さんの険しい表情と、沖田君の留守に繋がる事柄はミツバさんしかない。それに対して私は、『そうですね、確かに関係ない話でした』とは思えない。
だって、それって土方さんの…心の大切な部分に関わることでしょう?そこに招き入れてもらえないのは……

「っ……、」

『関係ない』と、壁を作られることは…どれだけ寂しく、悲しい言葉か。

「…紅涙?」
「…、ぅ…っ、」
「…泣いてんのか?」

土方さんには…分からない。

「っ…いえ、……すみません。」

分かれという方が、無理かもしれない。私の気持ちなど、土方さんは知りもしないのだから。

「目に…ゴミが入っちゃったみたいで。」

目元を雑に拭い、顔を上げた。

「へへっ、…すみません、大丈夫です。」
「……、…そうか。」

土方さんは私をジッと見た後、薄い溜め息を吐きながら立ち上がった。

「じきにアイツも帰ってくる。お前は早く寝ろ。」

ポンと私の頭を触り、廊下を歩いて行く。

「…、」

こういう時、素直に気持ちが言えたらいいのにと思う。そうしたらもっと…

「……っ…、」

もっと楽に……失恋できていたのにな。

「っ、…っ…。」

土方さんの背中が滲んで見える。
溢れる涙を袖で拭った。その背に、

「……紅涙?」
「!」

新たな声がぶつかる。

「沖田…君…、」

振り返る前、足を止める土方さんが見えた。

「そんなとこで何やってんでさァ。」
「あ…うん、ちょっと……眠れなくて。」
「眠れねェなら俺が…、…?紅涙、その顔……」

沖田君が駆け寄ってくる。
土方さんは…?土方さんはどんな様子で……

「…、」

振り返ると、そこにはもう誰もいなかった。
いつの間にか、いなくなっていた。

「土方さん…」

どうしちゃったの…?
足を止めたのなら、小言の一つでも言うのが土方さんでしょ?なのに一体……一体何があったっていうの…?

「どうしたんでさァ。」

沖田君が私の傍で膝をついた。
顔を覗き込まれ、不意に私は苦笑しながら目をそらす。

「なんでもないよ。」
「なんでもないって顔してねェし。……野郎か?」

「え…?」
「野郎が関係してんのか。」
「っち、違う!…ほんとに…大丈夫だから。」

沖田君の肩を押し、距離を取った。

「目にゴミが入っただけだよ。」
「…。」
「…なに?もう大丈夫だって。だから――」
「紅涙。」

突然、沖田君の手が私の背中に回り、

「!?」

気付くと抱き締められていた。

「っお、沖田君…!?」
「…俺にしろ。」
「っえ!?」
「俺にしなせェ。」

耳元で囁く。

「野郎なんて、すぐに忘れさせてやる。」
「…沖田…君…、」
「俺にしとけ、紅涙。」

どうして…どうして今、そんな話になるの?
なんで私が…失恋したみたいな……話になってるの…?

「……沖田君、…、」

土方さんとミツバさんは……

「っ…、」
「紅涙…。」

二人は……、土方さんは、やっぱり……

「ぅっ…、っ、沖田君っ…」
「…紅涙、」

……好きなんだね。

「……部屋へ行こう。」

沖田君に手を引かれ、部屋に入る。
自室ではなく、沖田君の部屋に。

「…。」

変わる。これまでの、私達の関係が。

「先に風呂入ってきまさァ。」
「あ…じゃあ部屋に戻るよ。」
「はァ?来たばっかだろうが。部屋にいろィ。」
「でも」
「ここにいろ。…いなかったら殺す。」
「殺す殺すって…沖田君、最近使いすぎて全然脅しになってな――」
「俺も、」

強調するように声を張る。
私が口を閉じると、沖田君は少し目を伏せた。

「俺も…今日は誰かといてェ気分だから。」
「…、」

それは、夜じゃなければ周りの物音に掻き消されていたであろう小さな呟き。それでいてどこか寂しげな、

「ここにいろ。」
「…、……わかった。」

すがるような…そんな声だった。
沖田君は沖田君で、ミツバさんの結婚を寂しく感じているのだと思う。昔から、とても慕っていたそうだし。

「じゃあ風呂行ってくる。」
「ん。行ってらっしゃい。」

部屋から出て行く沖田君を見送り、自室以上にすることのない部屋で一人ぼんやりする。

「…お布団でも敷いててあげようかな。」

布団へ手を伸ばす。が、不意に頭によぎった。

『布団なんか敷いて何しようってんですかィ』

「……やめておこう。」

妙な関係に拍車をかけてしまう。
…って、妙な関係も何も、数日前まで何もなかったんだけど。

「なんだかなぁ…。」

何のわだかりもなく、これからもそれなりに平凡な毎日が続いていくとばかり思っていたのに。
沖田君の好意や土方さんの気持ち、ミツバさんの存在が日常を……

「…違う。私が知らなかっただけだ。」

皆は変わらないんだ。ずっと心の奥深くに持っていた。皆は昔から変わらない。私が、知らなかっただけだ。

「はぁ…。」

目まぐるしくて疲れる。
布団にもたれかかり、目を閉じた。
ずっと続ていくものなんてない。
いつかはみんな、バラバラになる。バラバラの道を歩いて、進んでいく。それがより現実味を帯びたのが…今日だったという話。

「…寂しいな。」
「俺も。」
「!?」

目を開けた。
そこには、後ろ手に障子を閉める沖田君がいる。

「え…?お風呂は…」
「入った。」
「早っ…。」
「急いで入ったから。」
「……なんで?」
「紅涙がいるから。」
「…。」

口を開けたまま固まる私を、ほんのり赤い頬の沖田君が鼻で笑う。

「すげェ阿呆顔。」
「なっ…!」
「でも可愛い。」
「っっ!?」
「くくっ、」
「~っ、もう!」

顔を背けると、沖田君が「悪かった」と笑いながら傍に座った。私の足元にタオルを置き、

「反省してるから、髪を拭いてくだせェ。」

そんなことを言う。

「…はい?」
「まだ濡れてるから、俺の髪。」

確かに言われて見れば、髪の毛先からポタポタと雫が落ちている。

「……なんで私が?」
「拭いてもらいてェから。」

拭いてもらいたいって……

「よろしく。」
「…。」

仕方ないなぁ。
沖田君は私の真ん前に座り、ジッと待つ。こちらを向き、視線も合わせたままで。……いや、

「…沖田君。拭くなら背中向けてくれないと。」
「いーや、この向きで。こうじゃねェと、紅涙の顔見れないし。」
「なっ…、」

よくも次から次へとそんなことを…っ!

「ククッ。ウブにも程があらァ、紅涙。」
「っうるさい!」

ニタニタ笑う沖田君の頭へ乱暴にタオルを掛けた。

「もう拭くよ!?」
「うぃ~。」

腹いせとして、少し強めに髪を拭く。細く黄色い髪が、光を受けてキラキラ光った。
……綺麗な髪だ。ミツバさんも同じような髪色だった。…姉弟だから当然だけど。

「……紅涙、」
「ん?」
「さっき、何してたんでさァ。」
「さっき?」
「廊下で。」
「ああ……、…何も?」
「野郎に告白でもしたのか。」
「っ、…は、はい~!?してないよっ、そんなの全然!」
「でも泣いてたし。」
「それはっ……、…目にゴミが入っただけって言ったでしょ。」
「嘘ばっか。」
「嘘じゃないよ。」
「野郎のことが好きなんだろィ。」
「好きじゃ……、…。」

最後まで言えなかった。それは肯定となって、沖田君に届く。

「……なんで野郎なんだよ。」
「…。」
「なんでみんな…あの野郎なんだ。」
「沖田君…、」

『みんな』って…誰?私と……、……誰のこと…?

「…紅涙。」
「なに?」
「姉上が上京してきた理由、知ってるか?」
「あ、…うん。結婚するんでしょ?」
「そう。結婚って聞いた時、俺も…嬉しかった。姉上は身体が弱くて、いつも後ろに下がるような人だったから、やっと自分の幸せを手に入れる順番が来たんだって。なのに……っ、」

沖田君が鼻をすする。
髪の隙間から僅かに顔が見えた。眉を寄せ、ひどくつらそうにしている。

「なのにもうっ……っ、」

堅く口を閉じ、ゆっくりと開く。

「もう…っ、…姉上は先が…長くないって…、…っ。」
「!」

言葉を詰まらせながら、そう言った。
長くないって…そこまで具合が悪かったの?あんな……あんなに綺麗な笑顔を浮かべていたのに……

「そんな状態だってのに姉上はっ…まだ野郎を…っ野郎のことを今でも…っ…、」
「…。」

…なんだ…、…そうだったんだ。
二人は、想い合っていたのか。ずっと……昔から。

「…沖田君、」

それなら…

「私…、…協力するよ?」
「…何を。」
「ミツバさんの結婚…、……破談させよう。」
「!?…何言って…」
「そうすれば解決するよ。ミツバさんは…きっと幸せになれる。だってミツバさんと土方さんは…、……。」

『両想いなんだから』
それが、声にならない。喉につっかえて、言葉に出来なかった。

「…破談させる必要なんかねェし。」

沖田君は私に首を振る。

「姉上は誰かと結婚して…幸せになってくれればいいんだ。」
「でもミツバさんが好きなのは」
「あの野郎は、」
「…、」

沖田君の強い声音に口を閉じる。沖田君は目を伏せながらもグッと眉を寄せていた。

「土方の野郎は…武州を出る時、姉上に…っ、…酷ェことを言った。」
「…酷いこと?」
「だから…、だから絶対に許さねェ。姉上には幸せに…、っ…アイツじゃない誰かと幸せになってもらいてェんだ…!」
「沖田君…。」

沖田君が目を擦る。

「…紅涙、どうすればいい?どうすれば姉上は幸せになれると思う?どうすれば……姉上は長生きすると思う?」
「…、」
「俺ァつくづく自分が嫌になった。ここにいるのにバカみてェに生きてるだけで…姉上の助けにもならず……ッ、…無力さに反吐が出る。」

吐き捨てるように鼻先で笑った沖田君の目は、真っ赤だった。脆く、弱く、散ってしまいそうな瞳。

「…。」

私は掛ける言葉を見つけられず、ただ沖田君を抱き締めることしか出来なかった。

「っ、…紅涙、」
「……。」
「…、」

私の背中に手を回し、肩へ顔を埋める。
少しでも、支えになれればと思った。こんなことくらいしか出来ないけど、抱き締めた身体から、少しでも痛みが私にうつればいいのにと思っていた。

そうして抱き合い、どれくらいか経った頃。気付くと、

「…?」

私は、布団の上で眠っていた。

「……あれ?」

外が明るい。
朝?でもなんで布団に…?沖田君を抱き締めて…それで……

「…あ。」

ここ、自室じゃない。沖田君の部屋だ。
じゃあ沖田君が布団を敷いて、寝かせてくれたってこと?その沖田君は……

「…いない。」

布団を敷いていた形跡もない。
もしかして今、もうお昼とか…!?

「この部屋…時計ないなぁ。」

見回しても時計が一台もない。
寝坊だったら叱られると思い、私は急いで布団を片付け、廊下に出た。

「…、」

屯所内はしんと静まり返っている。人声もなければ、物音一つ聞こえない。少なからず、昼では有り得ない空気。

「よかった…、」

ひとまず寝坊ではなさそうだ。
ホッと胸を撫で下ろし、中庭を横目に廊下を歩いた。
するとその廊下の先から、こちらへ向かって誰かが歩いてくる。練習着姿で、どこかフラフラとして。

「……え?」

見えた姿に目を疑った。

「土方さん…!?」

練習着の至る所に、裂けたような破れがある。

「どっどうしたんですか!?」

慌てて駆け寄ると、土方さんは「静かにしろ」と眉を潜めた。

「何があったんですか…!?」
「…なんでもねェよ。それより早いな、お前。」
「えっ、あ…はい、まぁ…。」

目を逸らした先に土方さんの練習着がある。
これ…異常な破れ方をしている。日々の鍛錬って程度じゃない。薄らと鮮血も付いてるし……まさか誰かとやり合ってきた?

「…土方さん、今まで誰といたんですか?」
「あァ?…誰でもいいだろ。」

顔を背ける。言わない気だ。

「何やってたんですか?」
「朝練。」
「血が出るまで?」

練習着の血を指さす。土方さんはそれを見て、より一層眉を潜めた。

「これ、土方さんの血じゃありませんよね。そばに傷口もないようですし。」
「…っせーな。」
「一体何があったんですか?どうして本当のことを――」
「うるせェって言ってんだろ!!」
「!」

怒声が身体を突き抜ける。
今まで何度も怒られてきたし、大きな声も聞いてきたけど、今回のような威圧を感じたのは初めてだった。

「土方さん…、」

あまりの衝撃に言葉を失った。
どうして…隠すの?必死になって隠すような、知られたくないことなの…?そこまで土方さんが苛立って、隠したい事柄なんて……

「ミツバさんが…関係してるんですか。」
「!?…お前…」
「もしかしてやり合った相手、沖田君ですか?」
「…。」

やっぱり…。

「どうして…っ、どうしてそんなことになるんです!?きっと土方さんが素直になれば簡単にっ」
「黙れッ!!」
「っ…、」
「それ以上…喋るな。」
「…、」
「言ったはずだ。お前には関係ない。」
「っ!」

『お前には関係ねェ話だ』
…あれは、そのままの意味だったんだ。
私を護るための『関係ない』じゃなく、ただ単に…普通に…私を……拒んでいた。

「っ、」

込み上げる涙に、唇を噛んでうつむいた。
土方さんは舌打ちして、

「つまんねェことに首突っ込んでる暇があるなら、とっとと隊服に着替えろ。」

捨てセリフを残し、自室に戻って行く。

「…なんで…、…。」

なんでこんな気持ちにならなきゃいけないの…?
仕事でミスしたわけでも、サボったわけでもないのに、こんな…険悪な……。

「……ミツバさん…。」

彼女の存在が大きすぎる。
真選組すら、壊してしまいそうなほどに。