Question.3
その江戸にも同じく、真選組という組織がありました。もちろん彼らも街を護る警察官です。
「はァーったく、いくらやっても終わんねェ!」
真選組の副長 土方十四郎は、日々仕事に追われていました。優秀が故の忙しさ。睡眠不足もたたり、常にイライラしています。
そんな彼の唯一の癒しというのが煙草……失礼、彼女でした。
「お茶をお願いしましょうか。」
「ん、いやいい。」
彼女は副長補佐であり土方の恋人、早雨 紅涙。ほとんどの時間を副長室で過ごしています。
「チッ、誰だ?この汚ェ報告書は。」
「山崎さんじゃないですか?『あんパンの餡を落として拭いたら伸びちゃって~』みたいなこと言ってましたし。」
「あの野郎…っ」
「返却ですか?」
「おう!書き直しだ書き直し!却下印を五つくらい押しとけ!」
「はーい。」
共に過ごす時間がとても長い二人。
あうんの呼吸は恋人だからというだけではありません。互いを敬い、かけがえのない存在だと認識し合っているのです。
紅涙が仕えたいと思う相手は土方ただ一人、そして土方もまた、自分をフォローする相手は紅涙しかいないと思っていました。
…そんなある日。
「ケホッ…、」
紅涙が頻繁に咳をするようになりました。体調が思わしくありません。本人いはく風邪ではないようですが、乾いた小さな咳ばかりを繰り返します。
「やっぱり医者に診てもらった方がいいんじゃねェか?」
「そんな大層なものじゃありませんよ。それよりも早く仕事を終わらせないと!」